バッハの奏法
バッハの弾き方が分からないとおっしゃる大人の生徒さんは多い。バッハの時代、鍵盤楽器といえばチェンバロ・パイプオルガン・クラヴィコードの3つを指した。バッハの「平均律クラヴィーア曲集」はこの3つのどれかで弾くことを前提に作られたが、それがバッハの演奏を複雑なものにしている気がする。現代のピアノでバッハの作品を弾くとき、これらの楽器の特性を知ってどういうアーティキュレーション(1つ1つの音の切り方やつなぎ方)をするか決めることがまず必要となる。その楽曲の性格を感じながらテンポを決めたりデュナーミク(強弱法)を決めたりすべてをほぼ同時におこなう。アーティキュレーションには原則が3つほどあり、それ自体は難しいことではないが、「例外のない規則はない」のことわざ通り、演奏するものの主観により変化をつけることが可能なので、楽曲全体に通ずる論理性が必要となる。